【米国株】ブラックスカイ( BKSY)の決算まとめ

地球の周りを旋回する人工衛星
目次

はじめに

今回は、アメリカ株で宇宙関連銘柄として有名なブラックスカイ(BlackSky Technology Inc. )の決算をまとめます。

会社の概要

ブラックスカイは、衛星画像、人工知能、およびその他のデータ ソースを組み合わせて使用して、地球の表面に関するグローバルな監視サービスと洞察を提供する地理空間インテリジェンス企業です。 同社の技術により、ユーザーは気象パターン、自然災害、地政学的発展など、さまざまな地球規模の出来事をほぼリアルタイムで監視および分析できます。 ブラックスカイの顧客には政府機関、企業などが含まれており、そのサービスは防衛とセキュリティ、エネルギー、金融など、幅広い業界で利用されています。本社はバージニア州ハーンドンにあります。

BlackSky社が持つ参入障壁(moat)の具体的要素

衛星運用能力(技術的なmoat)

  • BlackSkyは衛星製造から運用まで垂直統合型で行っています。
  • 打ち上げから初回画像撮影までを数日間という非常に短期間で達成する能力があります(従来の衛星企業では数ヶ月かかるケースが一般的)。
  • AI解析に最適な画像を収集するため、衛星の撮影位置やタイミング、軌道調整までを効率化・自動化しています

低遅延・高頻度の観測(ビジネスモデルのmoat)

  • 高頻度観測能力と画像を取得してから解析結果を提供するまでのスピードが極めて短いことは競合との差別化要素です。
  • 特に、Gen-3衛星では高解像度(35cm)画像を低遅延で提供できる点が強力な強みとなっています。
  • これは防衛や危機管理、経済・環境モニタリングにおいて決定的な競争優位性になりえます。

政府・軍事機関との強固な顧客関係(顧客基盤のmoat)

  • 米国政府(NRO、NGAなど)や世界各国の軍事・政府機関と長期契約を結んでおり、安定した収益基盤があります。
  • 特に大口顧客と長期契約を締結し、長期的な収益基盤を確保しています(例:NGAの「Luno」プログラムやNROの「EOCL」契約など)​。

AIおよびソフトウェアプラットフォーム(技術的・データのmoat)

  • BlackSkyの「Spectra」プラットフォームは自社衛星の画像に加え、第三者衛星データ、レーダーデータ、RFデータなどを統合し、マルチソースの解析が可能です。
  • 画像から自動的に物体の分類・検知を行える独自のAIモデルを構築しています。
  • これは単なる画像解析に留まらず、「画像データ+AI分析結果」という高付加価値サービスを提供することで、他社が容易に模倣できない競争優位性を作り出しています。

低コスト・高効率モデル(経済的なmoat)

  • BlackSkyの衛星は、従来の衛星企業が提供するものよりも、製造・運用コストが圧倒的に低く(従来型衛星のコストの10~15%程度)、経済的に有利なビジネスモデルを展開できます​。

AI解析サービスの優位性

AnthropicやOpenAIといったAI開発企業にAIサービスを代替される可能性

理論上、AnthropicやOpenAIといった優れたAI開発企業であれば、衛星画像というインプットデータを入手できさえすれば、そのデータを解析・処理するAIモデルを構築すること自体は十分に可能だと考えられます。AI技術そのものに関して言えば、両社は画像解析や物体検出、分類といったタスクにおいて高い能力をすでに示しているからです。

しかし、実際にこのような衛星画像のAI解析サービスを展開するためには、以下のような課題や差別化要素が存在します。

専門的なドメイン知識

  • 衛星画像は非常に特殊なデータで、天候、大気状態、光学的な特性(影・雲・地表反射等)の変動に対応した前処理技術が必要です。
  • BlackSkyのような専門企業は、衛星の軌道特性、撮影条件、光学特性などに関する専門知識を豊富に持っており、AI解析を効率的かつ正確に行えるよう画像データを最適化しています。

データへのアクセスとリアルタイム性

  • AIモデルは大量の画像データを用いて訓練されることで高い性能を発揮します。つまり、リアルタイムの衛星画像を安定的かつ大量に取得できる環境が必須です。
  • BlackSkyは自社で衛星を保有・運用しているため、画像取得からAI解析・顧客への配信までのタイムラグを最小化する仕組みを実現しています。これは他のAI専業企業が独立して行う場合には困難で、パートナーシップやデータ調達の仕組みが別途必要になります。

画像データのコスト・アクセス性

  • 衛星画像は多くの場合、商業的に販売されています。Planet Labs、Maxar、BlackSkyなどの企業は、自社衛星から得られたデータを販売することで収益を上げているため、AI企業がそれらを利用する場合はライセンス費用が発生します。
  • 自社で衛星を持たない企業にとっては、これらの画像の調達コストや利用条件が障壁になることがあります。

特化したアルゴリズムの精度と競争力

  • 単純な画像分類や物体検出を行うAIは汎用的なもので十分ですが、衛星画像から高精度・高信頼性な解析を行うためには、衛星画像特有の解像度や視野角、天候・日照条件などを考慮した高度なアルゴリズムと訓練済みモデルが必要です。
  • BlackSkyはこれらの課題に特化したアルゴリズムを内製しており、それが競争優位性につながっています。

画像取得の頻度と時間的な多様性

  • 単なるAI解析機能だけでなく、画像をリアルタイムに近い速度で収集・提供できるかがサービス価値の重要な差別化要素です。BlackSkyは特に、高頻度(1日に複数回の観測)での衛星画像収集に強みを持っています。

法的・規制上の問題

  • 衛星画像データは地理的に機密性が高い場所や軍事施設を含む場合、公開制限が設けられることがあります。企業がこうしたデータを扱う場合には、規制や許認可に対応する必要があります。

専門特化とビジネスモデルの違い

  • OpenAIやAnthropicは、現在は汎用的な自然言語処理やマルチモーダルAI技術を中心に研究・開発しているため、衛星データに特化した事業展開を行うには追加の専門的リソースが必要になります。
  • 一方、BlackSkyは、特定のニーズ(安全保障、経済活動モニタリング、防衛、災害対応)に応じた特化型のAI解析を提供しており、専門的・戦略的に特化しています。

まとめ

  • 技術的にはAnthropicやOpenAIも衛星画像を入手できれば解析可能です。
  • しかし実際の運用にあたっては、衛星画像データの取得体制、ライセンスコスト、リアルタイム性、特定領域に特化したアルゴリズムとノウハウ、規制への対応能力など、AI解析以外の領域で多くの差別化要素があります。
  • つまり、AIの性能のみであれば大手AI企業も同様か、それ以上の解析が可能ですが、実際の事業として成功するためには衛星運用・データ提供の仕組みや専門知識といった別の競争優位性が重要になり、その面では現時点ではBlackSkyが先行していると考えられます。

2024年第4四半期決算ハイライト

BlackSky Technologyは2024年第4四半期および通年の決算を発表しました。通年の売上高は1億210万ドルに達し、そのうち画像・分析ソフトウェアサービスの収益は7,010万ドルとなりました。また、調整後EBITDAは前年の損失100万ドルから1,160万ドルに改善されました。

第4四半期には同社初となる非常に高解像度(35センチ)のGen-3衛星を軌道に投入し、打ち上げからわずか5日で高品質な画像の提供を開始。この新たな衛星により、より精度の高いリアルタイムのAI分析が可能となり、顧客の期待を上回る成果を示しています。

さらに、2025年の収益は前年比で約30%の成長を見込んでいます。

主な最近の受注実績として、

  • 米国家偵察局(NRO)とのElectro-Optical Commercial Layerプログラムの契約延長(2026年まで)
  • 国際的な戦略顧客との7年間、1億ドル超の契約獲得
  • インドの商用地球観測を支援するための約2,000万ドル規模の契約獲得
  • 米国防総省傘下の防衛イノベーションユニットからのTACGEOプログラム拡張契約

2025年の見通しとして、売上高は1億2,500万ドルから1億4,200万ドルの範囲、調整後EBITDAは1,400万ドルから2,200万ドルの範囲を予測しています。また、設備投資については継続的に衛星コンステレーションの拡充に向けて支出を計画しています。

BlackSkyの戦略は、今後も高頻度・高解像度の衛星画像サービスを拡大し、AI駆動型の分析力を強化することにより、顧客のリアルタイムでの意思決定支援を一層高度化させることに焦点を当てています。

純利益、営業キャッシュフロー、売上高のまとめ(グラフ)

単位は1,000ドルです。

四半期ごとのグラフ

Screenshot

年ごとのグラフ

純利益

純利益(Net Income)は以下です。

四半期ごとのデータ

四半期純利益 (Net Income) [1,000ドル]
2021年 Q2-35,585
2021年 Q3-46,897
2021年 Q45,395
2022年 Q1-19,988
2022年 Q2-26,278
2022年 Q3-13,048
2022年 Q4-14,975
2023年 Q1-17,315
2023年 Q2-33,431
2023年 Q3675
2023年 Q4-3,844
2024年 Q1-15,810
2024年 Q2-9,397
2024年 Q3-12,591
2024年 Q4-19,225

年ごとのデータ

純利益 (Net Income) [1,000ドル]
2020年-19,535
2021年-245,643
2022年-74,342
2023年-53,915
2024年-57,218

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフロー(Total Cash Flow from Operating Activities)は以下です。

四半期ごとのデータ

四半期営業キャッシュフロー [1,000ドル]
(Total Cash Flow from Operating Activities)
2021年 Q2-10,529
2021年 Q3-17,630
2021年 Q4-15,130
2022年 Q1-12,676
2022年 Q2-15,113
2022年 Q3-11,640
2022年 Q4-5,027
2023年 Q1-16,602
2023年 Q2977
2023年 Q3-173
2023年 Q4-1,623
2024年 Q1-3,810
2024年 Q2-1,792
2024年 Q31,035
2024年 Q4-1,817

年ごとのデータ

営業キャッシュフロー [1,000ドル]
(Total Cash Flow from Operating Activities)
2020年-31,674
2021年-53,872
2022年-44,456
2023年-17,421
2024年-6,384

売上高

売上高(Total Revenue)は以下です。

四半期ごとのデータ

スクロールできます
四半期売上高 (Total Revenue) [1,000ドル]成長率 *前年同期比 [%]
2021年 Q27,365
2021年 Q37,937
2021年 Q411,489
2022年 Q113,896
2022年 Q215,102+105
2022年 Q316,935+113
2022年 Q419,417+69
2023年 Q118,397+32
2023年 Q219,327+28
2023年 Q321,260+26
2023年 Q435,508+83
2024年 Q124,236+32
2024年 Q224,938+29
2024年 Q322,549+6
2024年 Q430,370-14

年ごとのデータ

スクロールできます
売上高 (Total Revenue) [1,000ドル]成長率 [%]
2020年21,135
2021年34,085+61
2022年65,350+92
2023年94,500+45
2024年102,093+8

EPS(一株あたりの純利益)

※2024/9/9に株式併合(8株を1株に統合)があったので、2024年Q2以前のEPSを8倍にしています。

四半期EPS [$]
2022年 Q2-1.68
2022年 Q3-0.88
2022年 Q4-1.04
2023年 Q1-1.04
2023年 Q2-1.84
2023年 Q30.08
2023年 Q4-0.24
2024年 Q1-0.68
2024年 Q2-0.67
2024年 Q3-0.70
2024年 Q4-0.38

DSO(売掛金回収に要する日数)

これは、以前に以下のページでも投稿したのですが、改めて記載します。

四半期DSO [日]
2021年 Q352.3
2021年 Q429.9
2022年 Q126.7
2022年 Q226.9
2022年 Q322.9
2022年 Q419.3
2022年 Q130.2
2022年 Q238.8
2023年 Q321.7
2023年 Q412.6
2024年 Q123.8
2024年 Q225.2
2024年 Q337.4
2024年 Q437.5

地域ごとの売上

地域ごとの売上は以下です。単位は1,000ドルです。

スクロールできます
四半期北アメリカ
(North America)
中東
(Middle East)
アジア
(Asia)
その他
(Other)
2022年 Q111,1475941,994161
2022年 Q212,4377821,584299
2022年 Q314,99696910960
2022年 Q415,4721,1142,658173
2023年 Q114,0191,5252,625228
2023年 Q214,4921,3703,177288
2023年 Q314,4332,7383,827262
2023年 Q417,0792,75215,429248
2024年 Q115,1922,4946,248302
2024年 Q215,0294,1505,526233
2024年 Q313,3923,3855,549223
2024年 Q420,1694,5285,445228

顧客の属性ごとの売上

顧客の属性ごとの売上は以下です。単位は1000ドルです。

スクロールできます
四半期米国連邦政府および機関
(U.S. federal government and agencies)
海外の政府
(International government)
商用とその他
(Commercial and other)
2022年 Q111,0632,74588
2022年 Q212,1622,742198
2022年 Q314,8581,822255
2022年 Q415,1034,066248
2023年 Q113,6704,383344
2023年 Q214,0694,871387
2023年 Q314,0416,846373
2023年 Q416,12518,480363
2024年 Q114,7579,019460
2024年 Q213,94810,028962
2024年 Q312,9039,048598
2024年 Q419,6499,875846
Ottaka

海外の政府向けが伸びていますね。
また、商用とその他について、金額は他と比較すると低いですが、堅調に伸びているので、今後に期待したいですね。(2023.08.11記)

各サービスごとの売上

各サービスごとの売上は以下です。単位は1000ドルです。

スクロールできます
四半期画像
(Imagery)
データ、ソフトウェア、分析
(Data, software and analytics)
エンジニアリングと統合
(Engineering & integration)
2022年 Q13,6106,1624,124
2022年 Q26,8336,5171,752
2022年 Q310,7694,2221,944

注)2022年Q4から、「データ、ソフトウェア、分析(Data, software and analytics)」の分類を「データ、ソフトウェア、分析(Data, software and analytics)」と「プロフェッショナルサービス(Professional services)」の二つに分けるようにした様です。

スクロールできます
四半期画像
(Imagery)
データ、ソフトウェア、分析
(Data, software and analytics)
エンジニアリングサービス
(Engineering services)
プロフェッショナルサービス
(Professional services)
2023年 Q112,9122,84892,628
2023年 Q212,7782,5502923,707
2023年 Q313,5071,7574315,565
2023年 Q415,4333,60611,5454,924
2024年 Q115,8951,9382,3164,087
2024年 Q215,3232,1461,8975,572
2024年 Q315,5651,7117374,536
2024年 Q415,7351,74998011,906
スクロールできます
画像
(Imagery)
データ、ソフトウェア、分析
(Data, software and analytics)
エンジニアリングサービス
(Engineering services)
プロフェッショナルサービス
(Professional services)
総売上
(Total revenue)
2021年8,6486,7179,0399,68134,085
2022年34,24213,1739,3728,56365,350
2023年54,63010,76112,27716,82494,492
2024年62,5187,5445,93026,101102,093

参考.投資関係の本の紹介

Ottaka

以下に投資関係の本を上げておきますので、面白そうなのがあったら、確認してみてください。

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